インセイン :プレイヤー1人用シナリオ運用ガイド
当サイト、アルバガルドではプレイヤー1人用の『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』シナリオを配布しています。
公式では『インセイン シナリオ集 ディオダディ荘の怪奇談義 (Role&Roll RPG)』
の「冬の朝」などがありますね。
友達に声をかければ手軽に一時間以内でプレイできる……すばらしいですね。
これなら休日を待つ必要もありません。
さて『インセイン』をすでに何度もプレイしたベテランでも、1人用シナリオのGMをしたことがない……という人は多いのではないでしょうか。
今回は1人用シナリオをプレイするさいGMがどのような点に注意すべきなのかを考えてみました。
あくまでアルバガルド流ですので、絶対のものではありません。ベテランのGMはもっと他の意見があると思います。
おのおののGMが自分の流儀をみつけるための、手がかりくらいになればいいなあと考えています。
■メインフェイズ
シナリオ運用とはいっても導入フェイズ、メインフェイズに関しては、1人用だからといって特段変わるところはありません。
普通にシナリオどおりにすすめてください。
ただし「【好奇心】分野で行った判定は、再挑戦ができる」ことをプレイヤーが忘れているようなら、アドバイスしてあげてください。
1人用シナリオでは一回の手番の価値は、普段のセッションより大きなものとなります。
【好奇心】で調査判定を行い、再挑戦を忘れずにいかせば、メインフェイズで何の【秘密】も得られずに終わる……という悲劇は避けられるでしょう。
■戦闘バランス
さて問題となるのはGMの判断によって大きく左右される部分……つまり戦闘です。
まず最初に『インセイン』1人用シナリオにおいて、理想とする戦闘バランスを考えてみます。
自分があげるのは次の3点です。
・基本的にはPCが有利。
・PCが一撃で行動不能にならない。
・膠着状態にならない。PCが勝つ場合でも負ける場合でも、はやめに結果がでる。
戦闘が主な魅力となるシステムでは、他にもいろいろな要件があると思いますが、『インセイン』では戦闘要素は比較的希薄です。
とくにプレイヤー1人では多種多様な戦術で、戦闘を楽しむというわけにもいきません。
となればなるべくストレスなく、さっくりと雰囲気だけ楽しみたい!
一撃でエネミーを倒すくらいでちょうどいいと思っています。
とはいえ……『インセイン』は「ダメージの振り幅が大きく、PCが一撃死しやすい」という特徴があります。
PCが複数いればこうした運の要素の強い戦闘バランスはうまく機能します。
PC同士が協力して怪異に挑む場合は、多少のハプニングがあっても(誰かが行動不能になっても)、人数の多いPC側が常に有利に展開します。
PC同士が対立している場合、PCの能力差によって出来レースにならずにすみます。やってみるまで勝敗がわからない刺激的なPVPが実現できるのです。よくできてます。
しかしこれがPC1人となると……。
漫然と戦闘を進めると、プレイヤーとGMがサイコロを振り合い、数ラウンド膠着することもあります。
その一方、エネミーの最初の攻撃で、PCが行動不能になってしまうこともありえます。
でもこうした事態はある程度、プレイングで避けることができるのです。
■キャラクター作成
まずキャラクター作成時点で、プレイヤーにアドバイスすることがないか考えてみましょう。
ここで考えるべきは【基本攻撃】のダメージで6をだし、エネミーがいきなりPCを行動不能に追いやる一撃死への対策です。
プレイヤーが複数いれば1人が行動不能になっても、仲間がなんとかしてくれるでしょうが、1人ではそうもいきません。
PCが必ず勝利すべきだとは思いませんが、「一撃で」ケリがついてしまうのはあまりよろしくありません。
劣勢に立ったプレイヤーには、挽回のチャンスがあるべきでしょう。
いちばん簡単な解決方法はキャラクター作成時に「鎮痛剤」を取得してもらい、行動不能になった瞬間、使ってもらうことです。
行動不能時に「鎮痛剤」を使っていいのかは正直グレーゾーンですが……。
GMがルール裁定にこだわりがなければ、プレイヤー1人用では許可してもよいと思います。
アビリティ【頑健】【装甲】【童貞/乙女】などをとってもらうのも確実な方法です。
一撃死についてはシナリオですでに対策がとられている場合もあります。
具体的にはエネミーが【トリック】を取得していたり、PCがダメージを軽減するボーナスを獲得できるルートがあったりです。
そうそう、プレイヤーが1人では機能しないアビリティをとってしまわないように注意しましょう。
■エネミーのプロット
これ、いちばん大切です!
エネミーはプロットの際、高めの数字(4~6)を出すようにしましょう。エネミーが回避判定に成功しやすいと、それだけ膠着状態が起こりやすくなります。
『シノビガミ』などと違い、一度プロットしたらずっとそのままの『インセイン』でこれは致命的です。
悲惨なのは「エネミーのプロットが低く、PCのプロットが高い」ときで、エネミーの攻撃がPCに一方的に当たるという目もあてられない事態になります。
もし万が一そうなってしまったら、プレイヤーに【戦場移動】をうながしましょう。
逆に言えば、ここでのプロットの値で、その戦闘の難易度を設定できます。
さくっと終わらせたいなら「6」、戦闘に危機感をだしたいならもうちょっと低い数字というようにプロットを選ぶといいんじゃないでしょうか。
またプレイヤーにむけてはっきり言っちゃいますと、特殊な事情のない一対一の戦闘においてプロットは「1」が最適解です。
高い数字をプロットした際には「へっへっへ、これでエネミーが真っ先に動けるぞ」みたいに、初心者プレイヤーの危機感をあおるサービスをするのもオススメですよ。慣れたプレイヤーには通じませんけどね。
……なお『デッドループ』の選択ルール「猛攻」を使うと以上の事情はがらりとかわります。
一対一の戦闘でこの選択ルールを採用すると、あまりにスリリングなことになってしまうのでオススメはしません。
■回想シーンと武器の使用を確認する
仮にエネミーがPCと同スペックだとしたら、【生命力】は6。それに対して【基本攻撃】の与えるダメージは「1~6」……これはほとんどギャンブルです。
PC側はすこしでも確実にダメージを与える方法を考えなくてはなりません。
その代表的な方法が「回想シーン」です。
慣れていないプレイヤーはよく「回想シーン」を忘れます。
プレイヤー1人シナリオにおける長期戦の多くはプレイヤーが「回想シーン」を忘れるか、
「まあ一撃目だし、とりあえず使わなくてもいいかな」と判断することで発生します。
GMはダメージ算出時に「回想シーンを使う?」とかならず確認しましょう。
【基本攻撃】をおこない、ダメージ算出時に「回想シーン」を使えばダメージは2D6……期待値は7。
これで倒せないエネミーはそう出ないでしょう。これだけで膠着状態に陥る可能性は激減します。
あと命中判定に失敗したときには「武器」をもっていないかプレイヤーに確認してください。
温存しておいてもいいことはないですからね。
「お守り」がエネミーの判定に対して使えることもお忘れなく。
■回想シーンを防御に使えるか?
「回想シーン」はいざというときの防御に使ったほうがいいのではないか
……と考える人もいるかもしれません。
しかしそれはちょっと難しいです。
『インセイン』は原則的に回避判定の目標値は、プロット時に選ぶことができます。
つまりプレイヤーは「これなら回避できるな」という数字をすでに自主的に選んでいるのです。
「この回避の目標値は絶望的だから『回想シーン』を使おう」という決断はしにくいわけです。
そのうえダメージの振り幅が大きいため「この攻撃が当たれば確実に行動不能になる」という状況もすくないといえます。
当たるかどうかもわからず、それが致命傷になるかもわからない状況で、シナリオ一回の切り札を使える人はそうはいないでしょう。
なので基本的には、回想シーンは攻撃のダメージにもちいるのが無難だといえます。
もちろんこれはあくまで一般論。
クライマックスの解決手段によっては、回想シーンのつかいどころが別にあることもあるでしょう。
■【狂気】はPCの味方
GMがプレイヤーの出せる助け船としては「アドリブで恐怖判定をさせ、【狂気】をわたす」という方法もあります。
もちろん錯乱状態になったり、山札がなくなったら困ります。
しかし、手元にある程度【狂気】があったほうが、プレイヤーは有利になるのです。
なぜなら「顕在化した【狂気】の枚数をダメージにプラスする」というルールがあるからです。
先ほども言ったように『インセイン』はダメージの振り幅が非常に大きいゲーム。
ここに固定値を加えられる【狂気】は、大変強力なリソースなのです。
また【狂気】にははっきりとプレイヤーの味方になるものもあります。
プレイヤー1人用における代表的なお助けカードは「異性への恐怖」「敵か味方か」です。
これらはいっしょに登場しているキャラクターにダメージを与えます。
そして他のPCがいないなら、それはエネミーということになります。
このゲームにおいて確実にダメージを与えられることが大切なのは、先に述べたとおりです。
とはいえ、この助け舟は必ずださなきゃいけないということもありません。
恐怖判定についてはシナリオに記載されたものしかおこなわないという方針でもよいでしょう。
■まとめ
まとめると……『インセイン』1人用シナリオにおいて、GMが注意すべき点は以下のようになります。
・「鎮痛剤」【頑健】【装甲】【童貞/乙女】などを取得し、いきなり6点のダメージを受けてもだいじょうぶなようにPCをつくってもらう。
・エネミーはプロットの際、高めの数字(4~6)を出す。
・PCがダメージを算出するさい、「回想シーン使ったほうがいいよ」と確認する。アイテムの使用も忘れてないかたずねる。
・PCがあまり【狂気】をもっていないようなら、理由をつけて恐怖判定させる。
そんな特別なことではありませんね。
複数人の『インセイン』であっても、だいたい似たような考えでみんなマスタリングしてるんじゃないでしょうか。
それではよき逢魔人ライフを……。