インセインシナリオ_ラヴクラフトの改稿 /*シナリオ情報*/ ライティング:あるばがるど 頒布サイト:アルバガルド http://ikefukurou.sakura.ne.jp/alba/ 更新日:2017/01/12 ウェブ拍手: http://clap.webclap.com/clap.php?id=albagard&page_id=jyoso 本シナリオは河嶋陶一朗/冒険企画局『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』の二次著作物です。 /*事前情報*/ ■セッティング シナリオタイトル:ラヴクラフトの改稿 シナリオタイプ:特殊型 セッティング:狂騒の20年代 プレイヤー人数:1 サイクル:2 プライズ:なし 使用するルールブック:『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』『インセイン2 デッドループ』 ■トレーラー  偉大な小説家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト。彼は今日、クトゥルフ神話として知れ渡っているホラー小説の創造者です。  クトゥルフ神話はパルプ雑誌『ウィアード・テイルズ』の作家たちのお遊びとして誕生しました。ラヴクラフトとその仲間たちは、互いの小説の世界観をつなげて、巨大な神話を創作したのです。  またラヴクラフトは、新人小説家の原稿の手直しをひきうけることもありました。そうした作品の中には、ラヴクラフトの全面的な改稿によって、クトゥルフ神話にくみこまれたものも存在します……。  これはクトゥルフ神話の黎明にいあわせた、ある新人小説家の物語です。 /*GM用テキスト*/ ■背景  一般的には知られていないことですが、地球には旧支配者とその眷属、魔術や超科学技術などが実在します。  しかし、そうした人の身を超えた神秘に手を伸ばしたものたちは、最終的には必ずや破滅の道筋をたどることになります。  邪神の一柱、ニャルラトホテプはこれらの禁断の知識を広めることで、人類を自滅に導こうと考えました。ニャルラトホテプは怪奇小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトを名乗り、こうした超常の世界を、小説のかたちで人々に伝えはじめます。  ニャルラトホテプは作家たちを次々と操り人形にし、その野望をおしすすめます。ニャルラトホテプの化身たちが書き出した小説群は、のちにクトゥルフ神話と呼ばれるようになります……。  ラヴクラフトと同時代にいあわせた新人小説家、PC@はニャルラトホテプの陰謀に立ち向かいます。 ■狂気  このシナリオでは以下の4枚を使用します。 『インセイン』収録:「パニック」「恐怖症」 『デッドループ』収録:「かんしゃく」「敵か味方か」 ■シーン表  このシナリオでは「ラヴクラフトシーン表」を使用してください。 ■特記事項  このシナリオは実在の人物をモチーフにしているものの、史実との整合性は重視していません。はたして何年のできごとなのか、『ウィアード・テイルズ』にのっているラヴクラフト作品はなにか、PC@の作家仲間は誰なのかなど、こまかい設定はありません。GMとプレイヤーにクトゥルフ神話のなりたちについて知識があるならば、具体的に考えてみてもおもしろいでしょう。  またシナリオ中に「クトゥルフ神話」という言葉が登場しますが、厳密に考えれば、この時代に生きる人々はまだクトゥルフ神話という言葉を(すくなくとも当たり前には)用いなかったはずです。これはあくまでGMとプレイヤーに向けた文言なのだと考えてください。  ただしニャルラトホテプだけは別です。彼はこれらの小説が、後の時代にクトゥルフ神話と呼ばれるようになると、どういうわけか知っているのです! /*シナリオ本文*/ ■導入  PC@はかけだしの怪奇小説家です。今度パルプ雑誌『ウィアード・テイルズ』に小説が掲載されることになりました。しかし編集者は「そのままではのせられないので、プロに推敲してもらうように」といってきました。そうして紹介されたのがハワード・フィリップス・ラヴクラフトという人物です。  新人であるPC@は編集者の鶴の一声には逆らえません。そんなわけでPC@の原稿はラヴクラフトのもとに送られ、その手で改稿されました。もうすぐPC@のもとに送り返されてくるはずです。  今、PC@は自分の家で、原稿が届くのを待っています。しかし、どうにも不安がぬぐえません。あなたの作品はいったいどうなってしまっているのでしょう……?  《憂い》で恐怖判定を行ってください。  そのあと「ラヴクラフト」「ウィアード・テイルズ」「作家仲間の手紙」のハンドアウトを公開します。これで導入フェイズは終了です。 ■クライマックス  郵便配達員がドアベルを鳴らします。彼は「ラヴクラフト様からのお届け物です」と原稿の入った封筒を差し出します。  郵便配達員はそのまま立ち去らず、「ラヴクラフト様から、PC@様が原稿をあらためるのを確認するように言いつかっています」と笑顔で言いはります。その態度はただの郵便配達員とは思えません。それもそのはず彼はニャルラトホテプの化身なのです。  PC@が原稿を手にとると、それが人の脳髄をのっとる一種の寄生生物であることがわかります。それはクトゥルフ神話の魅力をエサに読者をひきこみ、その心をからめとって操り人形にしてしまうのです。ああ、しかし。原稿をめくる手が止められない!  《混沌》で恐怖判定を行ってください。  その後、ラヴクラフトの修正稿と戦闘を開始します。この戦闘に敗北すると、PC@はニャルラトホテプの人形となります。クトゥルフ神話の世界を広めるための、執筆活動に従事することになるでしょう。 ■結末  戦闘に勝利したならば、PC@は意識をたもったまま原稿を読み終えます。郵便配達員はPC@の精神力をほめたたえます。 「いや、すばらしい精神力です。このままでく人形にするにはおしい人材だ。あなたには物事をなしとげる力がある……どうでしょう、わたしと取引をしませんか?」 「わたしはあなたにこの星の真実を……旧支配者たちのすべてを教えてさしあげます。あなたはそれをもとに自由に小説を執筆してください」 「もちろん、できあがったものについて口出しはいたしません。他の作家のように、操り人形にもしません。わたしは最高のテーマを提供し、あなたはそれを最高のかたちで調理する。ただそれだけです」 「あなたの小説は人類終焉のその日まで、ラヴクラフトと双璧をなすクトゥルフ神話の聖典として語り継がれることになるでしょう」 「いかがですか? 後世に残る名作を書く。作家としての本懐をとげたいとは思いませんか……?」  この言葉にどのようにこたえるかは、PC@次第です。  PC@の【本当の使命】が「いつか真の名作を書きあげる」ことである場合、この取引に応じれば達成されます。PC@の書くクトゥルフ神話は、ラヴクラフトの作品と並ぶ名作として輝きつづけることになります。  PC@が応じなかった場合、GMは「PC@の書くべきテーマとはなんですか」とたずねてください。PC@がクトゥルフ神話にまさる題材を見つけていたならば、使命は達成されます。  PC@の【本当の使命】が「人類を守る」である場合、取引に応じると達成されません。クトゥルフ神話を広めることは、人類文明の滅亡を意味します。ニャルラトホテプとラヴクラフトに対して、対決の姿勢をしめすことが達成の条件です。  PC@が取引を拒んだなら、郵便配達員は「残念です。しかしもう人類はラヴクラフトの世界からのがれることはできませんよ」と言い残し、そのまま去っていきます。  PC@が取引に応じた場合には、郵便配達員は「それでは、わたしが知りうることをすべてお話ししましょう」とほほえみ、PC@にこの世界の真実を語りはじめます。長い夜になることでしょう……。 /*ラヴクラフトの修正稿*/ 脅威度:1 属性:怪異 生命力:4 好奇心:怪異 特技:《手触り》、《罠》、《魔術》 【基本攻撃】 攻撃 《手触り》 【ラヴクラフトの狂気】 サポート 可変 ラウンドの終了時に使用できる。目標ひとりを選ぶ。このとき目標は怪異分野の特技をランダムに選び、判定を行う。失敗すると、未公開の【狂気】をランダムに一枚選び、公開する。 解説 PC@が書いた小説原稿。ただしラヴクラフトによる全面的な改稿がおこなわれ、クトゥルフ神話となっている。読者の精神を破壊し、ニャルラトホテプの意のままに動く人形とする。 /*ハンドアウト*/ ▼名前:PC@ 推奨:作家 【使命】 あなたはかけだしの怪奇小説家だ。今度あなたの新作がパルプ雑誌『ウィアード・テイルズ』に掲載されることになった。ただし原稿を先輩作家にあずけ、手をいれてもらうことが条件だ。 あなたは今、添削された原稿が届くのを待っている。先輩作家の名前はハワード・フィリップス・ラヴクラフト……作品がめちゃくちゃにされていないといいのだが。 あなたの【使命】は自分の作品を守ることだ。 【秘密】 ショック:なし あなたには作家として書くべきテーマがない。そのことはあなたにとって深い悩みだ。 あなたの【本当の使命】はいつか真の名作を書きあげることである。 この使命を達成するためには、自分の書くべきテーマを見つけなければならない。 ▼名前:ラヴクラフト 【使命】 PC@の作品を添削する先輩作家。寡作だが『ウィアード・テイルズ』読者のあいだでは人気がある。 ラヴクラフトの創作物は共通した世界観をもっている。異形の神々の物語群は、神話と呼ぶにふさわしい。 あなたの【使命】はPC@の作品をよりよくすることである。 【秘密】 ショック:全員 あなたは無貌の神ニャルラトホテプの化身だ。あなたの【本当の使命】はおもしろおかしい小説として真実を広め、人類を破滅に導くことだ。もしも知的種族がこれらの神話知識を得た場合、いずれは破滅的な魔術に手を染め、滅びさることとなる。ニャルラトホテプはこれまでいくつもの異星文明を滅ぼし、愉悦にひたってきた。 《終末》で恐怖判定を行う。 この【秘密】を知ったPCは【本当の使命】を「人類を守る」に変更してもよい(しなくてもよい)。 ▼物品:ウィアード・テイルズ 【概要】 冒険小説や怪奇小説を掲載するパルプ雑誌。そういえば今回の号には、ラヴクラフトの作品がのっているんだっけ。 【秘密】 ショック:全員 ページをめくって息をのむ。身震いするようなコズミックホラー。荒唐無稽でありながら、真に迫っている。これは本当にフィクションなのか……? この【秘密】を知ったPCは「プライズ:クトゥルフ神話知識」を得る。 ▼物品:作家仲間の手紙 【概要】 『ウィアード・テイルズ』の作家達の間で、やりとりされる文通。 PC@がラヴクラフトの改稿について相談すると、「心配はいらない」とはげます手紙を送ってきた。 彼らはラヴクラフトを偉大な作家だと礼賛し、自分たちもその世界をもとにした小説を書くつもりだという。 【秘密】 ショック:全員 作家たちはなにものかに脳髄をのっとられ、自由意思をもたない人形となっている。彼らは主人の命ずるがままに文章をつづる、生きるタイプライターだ。 《霊魂》で恐怖判定を行う。 ……彼らの作品はクトゥルフ神話の一編として、後世に残ることだろう。しかし、それは彼ら自身の作品とはいえない。 ▼プライズ:クトゥルフ神話知識 【概要】 この地球に遙か昔から存在していた異形のものたちに関する知識。あくまでもラヴクラフトの創作……のはず。 持ち主が怪異のエネミーからダメージを受けたときに使用できる。そのダメージを0にする。そのあと【狂気】を一枚得る。以上の効果を発揮すると、プライズは失われる。 /*ラヴクラフトシーン表*/ 1 不意に記憶に謎の欠落があることに気がつく。何者かにぬきとられたのだ! そんな直感があなたをつらぬく。 2 鏡を見て、首をかしげる。今日の自分の顔は、なぜだかカエルに似ている気がする……? 3 壁の奥から動物の鳴き声が聞こえる。ただのネズミだ。そうに違いない。 4 なぜだろう。急に海産物が食べたくなってきた……。 5 うたた寝のあいだに、いやな夢をみる。石づくりの巨大都市。地下から響くうめき声がなにかをくりかえしうったえる。 6 朝刊を広げる。インスマスという街で、連邦捜査官による一斉検挙があったという。 EOF