インセインシナリオ_薬指の指輪 /*シナリオ情報*/ ライティング:あるばがるど 頒布サイト:アルバガルド http://ikefukurou.sakura.ne.jp/alba/ 更新日:2017/01/15 ウェブ拍手: http://clap.webclap.com/clap.php?id=albagard&page_id=ring 本シナリオは新紀元社発行『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』の二次著作物です。 /*事前情報*/ ■セッティング シナリオタイトル:薬指の指輪 シナリオタイプ:特殊型 セッティング:本当は怖い現代日本 プレイヤー人数:1 サイクル:2 使用するルールブック:『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』『インセイン2 デッドループ』 ■トレーラー  運命の恋に出会えるのは、きっと幸せなこと。しかしもしも、その恋が失われてしまったなら、いったいどうすればいいのだろう。過去の思い出に囚われたまま、生き続けるしかないのだろうか。  あなたの薬指にかがやく亡き恋人との指輪。あなたはそれを自分の手で壊さなくてはならない。新しい人生を歩むために……。  このシナリオにすとんと納得できる真相はありません。未来を選んでも、過去をふりむいても、胸には苦い後悔が残るでしょう。  答えのない問いに、あなたは苦しまなくてはならないのです。 /*GM用テキスト*/ ■背景  PC@はかつて運命的な恋をしました。しかしその恋は、恋人の死によって終わりを告げます。亡き恋人が忘れられなかったPC@は、思い出の指輪を薬指にはめて、今日まで日々を過ごしてきました。  数年後、PC@は新しい恋を見つけます。いよいよこの指輪をはずし、すべてを過去にすべきときがきたのです。  しかしPC@が決意した途端、指輪はなにをしてもはずれなくなってしまいます。亡き恋人の怨念が、PC@を手放すことを拒んでいるのです……。 ■狂気  このシナリオでは以下の4枚を使用します。 『インセイン』収録:「パニック」「恐怖症」 『デッドループ』収録:「かんしゃく」「敵か味方か」 ■シーン表  本シナリオでは「揺らぐ心シーン表」を使用してください。 ■特記事項  このシナリオに登場する亡き恋人に年齢性別の想定はありません。性格付けや口調もほとんど決まっていませんので、GMはあらかじめプレイヤーに希望をきいて、演出するとよいでしょう。  もしプレイヤーに好きなフィクション(小説、映画、漫画、アニメ、ゲームなど)のキャラクターがいるようでしたら、それをモデルに演出すると、よりふかく感情移入することができるでしょう。 /*シナリオ本文*/ ■導入  PC@は鼓動を高鳴らせながら家に帰ってきました。数年ぶりに恋をしたのです。相手とはすでに恋人となったのか、それとも片思いなのかはプレイヤーが自由に決めてかまいません。  PC@は亡き恋人との指輪をはずすときがついに来たのだと感じます。恋人を忘れられなかったあなたは、今日までなんとはなしに指輪をつけつづけてきました。しかし、新しい恋と向き合うために、ケジメをつけなければいけません。この指輪を、思い出の中にしまうときです。  しかし、どうしたことでしょう。これまでは簡単につけはずしできていた指輪が、薬指からぴくりとも動きません。  ハンドソープやオリーブオイルですべりをよくする。氷水で指のむくみをとる。糸をとおして強引に引っ張る……ひととおりの手段をためしてみましたが、どうにもなりません。もう指輪を壊すしかないでしょう。  本来であれば、もよりの消防署に連絡して、リングカッターで切断してもらうべきです。しかし、PC@は自分の手で指輪を壊すべきだと考えました。この不思議な現象の裏には、亡き恋人の意思のようなものを感じるのです。だったら、決着は自分でつけるべきです。  「指輪をねじきる」「指輪を眺める」「指輪にキスする」のハンドアウトを公開してください。これで導入フェイズは終了です。 ■メインフェイズ  以下のマスターシーンが発生します。 ●失われた未来  2サイクル目の1シーン目に挿入されるマスターシーンです。  指輪と苦闘するうちに、PC@はつかれはて、うたた寝をしてしまいます。そして亡き恋人が生きていたころのことを、その幸せな逢瀬を夢に見ます。  そのとき恋人は「自分が死んだら、恋人には新しい恋を見つけてほしい……なんて話をよく聞くけど、そんなのはいやだ」と言っていました。 「これは運命の恋だから。自分はこれを最後の恋にしたい。たとえ死がふたりをわかっても……」  恋人は屈託のない口調で、自分たちの未来をつゆとも疑っていませんでした。だからPC@もそれに同意したのです……。  あのとき、ふたりの未来には幸せな結末があるはずでした。たとえ新しい恋が成就したとしても、あんなふうに無邪気な愛の言葉を囁くことは二度とできないでしょう。  PC@は幸せな思い出から目をさまし、現実に帰ってきます。《恋》で恐怖判定を行ってください。 ■クライマックス  PC@はいよいよ指輪に真っ向から立ち向かいます。  プレイヤーにとくに演出の希望がなければ、PC@はペンチをもって指輪を切断しようとします。すると指輪は薬指を万力のようにしめあげ、必死に抵抗します。指輪のまわりの皮膚が鬱血し、指先がねじきれてしまいそうです。  薬指の指輪と戦闘を開始してください。 ■結末  指輪の【生命力】を0にしたなら、すうっと薬指を覆っていた気配が消えます。そしてそのまま指輪はちぎれました。【使命】はぶじ達成されます。PC@はもう自由なのです。  逆にPC@が脱落、あるいは行動不能になったなら、PC@は指輪をはずすことを……そして新しい恋をすることをあきらめてしまいます。  PC@が新たな恋をあきらめると、ふたたび指輪ははずれるようになります。とはいえ、亡き恋人の執着から自由になることは二度とありません。  はたして亡き恋人はこの指輪をとおしてPC@になにを訴えたかったのでしょう。裏切ったPC@を恨んでいるのでしょうか。それともPC@の新たな恋についてなにか警告しようとしていたのでしょうか……。  それはわかりません。もうあの人と言葉を通わせ、真意を問うことはできないのです。どちらにせよPC@はこのどうにもならない心の軋みを抱えて、生きていくしかないのです……。 /*薬指の指輪*/ 脅威度:2 属性:器物 生命力:6 好奇心:情動 特技:《切断》、《恋》、《霊魂》 【基本攻撃】 攻撃 《切断》 【あの忘れえぬ恋】 サポート 可変 ラウンドの終了時に使用できる。目標ひとりを選ぶ。このとき目標は情動分野の特技をランダムに選び、判定を行う。失敗すると、未公開の【狂気】をランダムに一枚選び、公開する。 解説 PC@の薬指の指輪。永遠を誓った亡き恋人との誓いの証。しかしそこには強い怨念が宿っている。  属性が器物のエネミーは、自分の【秘密】を獲得していない相手からの攻撃で2点以上のダメージを受けることはない。PC@が「指輪」と名前についたハンドアウトの【秘密】を1つでも獲得していたなら、薬指の指輪についての【秘密】を得ているものとみなす。  プレイヤーは戦闘中に手番をもちいて、ハンドアウトを対象に調査判定を行ってもよい。 /*ハンドアウト*/ ▼名前:PC@ 【使命】 あなたはかつて愛した恋人(伴侶)を失った。恋人のことが忘れられなかったあなたは、指輪を薬指につけつづけていた。しかし、それから長い歳月が流れ、今あなたは新しい恋をした。 ……この指輪をはずし、しまいこむときがきたのだ。あなたが決意した途端、指輪は薬指にしがみつき、なにをしても外れなくなってしまった。まるで亡き恋人があなたを離すまいとするかのように……。 あなたの【使命】は己の幸せのために、薬指の指輪を壊すことだ。 【秘密】 ショック:なし あなたはかつて、亡き恋人と「たとえ死がふたりをわかっても、生涯他の人を愛することはない」と約束した。あのときはただの恋人同士の甘いささやき、他愛のない睦み合いにすぎなかった。 しかし、その約束が心に刺さったちいさなトゲとなり、あなたをさいなんでいる。 あなたは【正気度】を2点減らして、ゲームを開始する。 ▼名前:指輪をねじ切る 【概要】 この指輪をはずすためには、もはやペンチでねじ切るしかない。これで壊れないということはないだろう。 【秘密】 ショック:全員 ペンチでねじきろうとすると、指輪はきりきりと薬指をしめあげる。骨を砕かされそうだ! PC@が苦痛に悲鳴をあげると、指輪の隙間から血がしたたる。 《痛み》で恐怖判定を行う。 PC@とエネミーは、それぞれ2点のダメージを受ける。 ▼名前:指輪を眺める 【概要】 なぜこの指輪ははずれないのだろう。どこかが歪んでいるのだろうか。もっとよく見てみよう。 【秘密】 ショック:全員 ふっと視界がかすみ、白昼夢を見た。薬指の指輪に何本もの赤い糸がからまっている。それは蜘蛛の巣のように網をはりながら、部屋中に広がって……! ああ、この絆からはけっして逃れられない……背筋がぞっと凍りつく。 《緊縛》で恐怖判定を行う。 あらためて思う。はやくこの指輪をはずさなくては。この【秘密】を知るPCがエネミーに与えるダメージは常に1点上昇する。 ▼名前:指輪にキスする 【概要】 あの人が別れをおしんでくれるのなら、せめて別れのキスをしよう。 【秘密】 ショック:全員 キスをすると、途端に指輪が焼きごてのように熱くなる。指輪とふれた唇から、灼熱が苦痛となって伝わってくる。 怨嗟にみちた幻聴が、ガンガンと頭の中で反響する。 「あいつともこんなふうにキスをするの? だめ、だめ!」 《霊魂》で恐怖判定を行う。 この指輪は自分の身を滅ぼしてしまう。もう壊すしかないのだ……そう決意する。この【秘密】を知るPCがエネミーから受けるダメージは常に1点減少する(最低1)。 /*揺らぐ心シーン表*/ 1 今、恋している人と亡き恋人。いったいどちらが運命の恋なのだろう。天秤にかけようとしている自分に気づき、自己嫌悪……。 2 ひょっとしてこの指輪は自分になにか警告しているのではないろうか。今の恋の先には、よくないことが待っているのでは……決心が揺らぎはじめる。 3 なぜこんなふうに傷つけられなくてはいけないのだろう。自分はそんなに恨まれるようなことをしただろうか。こんなの理不尽だ! 4 亡き恋人の意思を、たしかに感じる。なのにあの人が、なぜこんなことをするのかわからない。指輪に語りかけても、答えてはくれない……。 5 あの世というものが本当にあるのなら、今ここで死ねば、亡き恋人といっしょになれるのだろうか。危険な考えが、頭をもたげる。 6 スマホにメッセージがとどく。今、恋している人からのなにげない日常の会話。あたたかい気持ちになる。やっぱりこの恋はあきらめられない! EOF