インセインシナリオ_タクシードライバーVS幽霊 /*シナリオ情報*/ ライティング:あるばがるど 頒布サイト:アルバガルド http://ikefukurou.sakura.ne.jp/alba/ 更新日:2018/02/21 本シナリオは新紀元社発行『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』の二次著作物です。 /*事前情報*/ ■セッティング シナリオタイトル:タクシードライバーVS幽霊 シナリオタイプ:特殊型 セッティング:本当は怖い現代日本 プレイヤー人数:2 サイクル:3 使用するルールブック:『マルチジャンル・ホラーRPG インセイン』『インセイン2 デッドループ』 ■トレーラー  タクシーが乗せた乗客が、じつはこの世の人間ではなかった……という幽霊譚がある。そのシンプルな筋書きははるか昔から存在し、世界中でさまざまなバリエーションが生み出されてきた。今となっては、誰も驚かない。使い古されたお約束だ。  しかし、もしもそれが自分の身に起こったら、あなたはいったいどうするだろう……?  時間は深夜。人気のない山奥の道で、タクシーを呼びとめた謎の乗客。怪談話で何度も聞いてきたシチュエーション。後部座席のあの乗客は、ひょっとすると……。  タクシードライバーと幽霊、宿命の対決が今はじまる。 /*GM用テキスト*/ ■背景  タクシーの運転手であるPC@は、山奥で乗客を殺して埋める連続殺人犯です。一昨日もPC@は乗客だったPCAを殺して、山に埋めました。  しかし、さきほどぼろぼろになったPCAがタクシーをとめて、ふたたび乗客として乗り込んできました。一昨日たしかにとどめをさしたはずのPCAがまだ生きていたのでしょうか? だとしたら、このまま生かしてかえせば、PC@の犯行が露見してしまいます。  あるいはPCAはすでに死んでいて、幽霊となって憎きPC@の前にあらわれたのでしょうか……?  PCAが生還者なのか幽霊なのかはシナリオの展開によって変わります。 ■狂気  『インセイン』から「パニック」「盲目」「いきすぎた想い」「血への渇望」「怪物」「記憶喪失」「暴力衝動」、『デッドループ』から「なぜ自分だけ?」を用意してください。 ■シーン表  本シナリオでは「タクシーシーン表」を使用してください。 /*シナリオ本文*/ ■導入  このセッションの舞台となるのは、人里はなれた山奥です。時間は深夜。一台のタクシーが、曲がりくねった道を走っています。  車内には運転手であるPC@と、後部座席の乗客PCAのふたりだけ。PCAは先ほどこのタクシーを呼びとめ、乗り込んできたのです。  なんとも奇妙な乗客でした。PCAの全身からは水がしたたり、ぽたりぽたりと足もとを濡らしています。もちろん、今は雨なんて降っていません。  それに近くの民家まで数十キロも離れているのに、手荷物ひとつないのです。  PC@はこの乗客が、生きた人間ではないのではないかと疑いはじめます。  なにしろこのあたりはタクシードライバーの間でも、幽霊が出ると噂になっている峠なのです。  「足もとの水たまり」「ラジオ」「バックミラー」のハンドアウトを公開してください。これで導入フェイズは終了です。 ■メインフェイズ  このシナリオには以下のマスターシーンが発生します。 ●ラジオの雑音  2サイクル目の1シーン目に挿入されるマスターシーンです。PC全員が登場します。  トンネルに入り、調子がよかったとはいえないラジオの雑音が一層ひどくなります。  先ほどまで流れていたニュース番組はいつのまにか途切れ、やがてぼそぼそと囁くような声に変わります。 「でてきたよ。でてきたよ……あかるいところに……でてきたよ」 「でも……どうしよう。こんな顔じゃ、もうおうちに帰れない……ねえ、どおしよおぉ」  PC全員は《物音》で恐怖判定を行ってください。  トンネルをぬけると、声は消え、ラジオは元のニュース番組に戻ります。 ●シルエット  3サイクル目の1シーン目に挿入されるマスターシーンです。PC全員が登場します。  タクシーが街灯のそばをとおりすぎます。無機質な光が一瞬、その車体を照らしました。すると、アスファルトに異様なシルエットが浮かび上がりました。  タクシーのボンネットに、あるいは屋根のうえに無数の人影がしがみついているのです!  PC全員は《情景》で恐怖判定を行ってください。 ■クライマックス  山の麓に近づき、街のあかりがすぐ近くまで迫っています。そのときタクシーの速度ががくんと落ち始めます。アクセルを踏んでもだめ。うしろをむくと無数の幽霊がタクシーにまとわりついていることがわかります。  PC@の手で犠牲となった被害者たちの霊です。彼らは生者を、自分たちの仲間にくわえようとその手を伸ばします……。  被害者たちの霊との戦闘を開始します。データは「浮遊霊」(『デッドループ』193)を使用します。  「バックミラー」の【秘密】をPCの誰かが知っている場合は、浮遊霊はPCAを攻撃しません(仲間だとわかっているからです!)。その場合、PC@が行動不能、もしくは脱落したならば、浮遊霊はそれ以上なにもせず、戦闘から脱落します。 ■結末  PCAの【本当の使命】が家に帰るである場合、行動不能にならずにクライマックスを終えるか、行動不能になったPCAをPC@が家に帰すなら達成されます。  PCAの【本当の使命】が「恨みをはらす」である場合、基本的にはPC@を行動不能にすることで達成されます。ただしGMは異なるかたちでの復讐を認めてもかまいません。  PCの誰も「バックミラー」の【秘密】を知らない場合には、この秘密はなかったものとしてあつかいます。PCAは人間だったことになります。  生きて帰ったPCAが「PC@が犯人である」ことを誰かに伝えるならば、PC@は逮捕されることになります。もしそうなればPC@の【使命】は失敗です。  PC@だけが「バックミラー」の【秘密】を知っている場合には、PCAは自分が死んだことに気づかないまま家に戻ることになります。PCAはいつ真実に気がつくのでしょうか……。  自覚のあるなしに関わらず、幽霊であるPCAがPC@の正体について誰かにしゃべっても、PC@の罪に問うことはできません。しかしその怨念がPC@の運命を変えてしまう……ということもあるかもしれません……。 /*ハンドアウト*/ ▼PC@ 【使命】 あなたはタクシーの運転手だ。今、あなたは後部座席に奇妙な乗客をのせている。なにもない深夜の山奥に突然あらわれ、タクシーを呼びとめたのだ。その全身はびしょぬれで、今も車のシートを濡らしている。 このあたりでは幽霊がでるという噂もある。ひょっとしてこの乗客は、まさか……。 あなたの【使命】は無事に家に帰ることである。 【秘密】 ショック:全員 あなたはじつはPCAを知っている。あなたはこの山で乗客を殺してきた連続殺人犯。そしてPCAは一昨日殺して、山に埋めた獲物だ。だからこいつが生者であるはずがない。だが、もしあそこから息を吹き返したのだとすれば……? 生きて帰ったPCAが、あなたが犯人であることを第三者に話した場合、あなたの【使命】は達成されない。 ▼PCA 【使命】 あなたは山道を走るタクシーの乗客だ。全身はずぶ濡れで、ぽたりぽたりと足もとに水がしたたりおちている。手荷物はなにもない。まるで怪談話に出てくる幽霊そのものだ。いや、もしかしたら本当に……? あなたの【使命】は謎につつまれている。 【秘密】 ショック:なし あなたはここ数日の記憶がない。気がつくとずぶ濡れで川岸に横たわっていた。もうろうとした頭でこのタクシーを呼びとめ、家の住所へとむかっている。 あなたの【本当の使命】は家に帰ることだ。 しかし心のなかで不安がうずまく。自分は本当にまだ生きているのだろうか……? ▼名前:足もとの水たまり 【概要】 PCAの足もとに水がしたたっている。昨日は大雨だったが、やんでから1日は経過している。ただの旅行者が、ずぶ濡れになっている理由はない。 【秘密】 ショック:全員 頼りない車内のあかりのもとで、よく目をこらしてみる。透明なしずくのなかにまじるひとすじの赤色。 血だ……! PCAの身体から、血がしたたりおちている。 《痛み》で恐怖判定を行う。 ▼物品:ラジオ 【概要】 ニュースが流れている。昨日の大雨で、あちこちで土砂崩れが起こったらしい。 【秘密】 ショック:全員 拡散情報。近くの川の下流で、白骨化した死体がいくつか発見されたらしい。遺体はどれも捜索願いが出ていた行方不明者のもの。何者かに埋められていた死体が土砂崩れで流されたのではないかという。 ▼物品:バックミラー 【概要】 タクシーのバックミラー。後部座席とPCAがうつっている。 【秘密】 ショック:全員 バックミラーの中にうつる後部座席。そこに座るPCAの姿は、直接目で見た姿とはまるで違っていた。頭が半分潰れ、その眼窩からは眼球が落ちかけている。 間違いない。PCAは幽霊だ……! 《霊魂》で恐怖判定を行う。 この【秘密】をPCAが見た場合、PCAの【本当の使命】を恨みをはらすに変更する。以降、PCAはシナリオ終了時まで、恐怖判定に自動的に成功する(この【秘密】の恐怖判定は通常どおり行う)。 /*タクシーシーン表*/ 2 山の天気は変わりやすい。通り雨が、屋根の上でしぶきとなってはじける。 3 カーブミラーにうつる光は街灯ではない。ゆらりゆらりと揺れ、このタクシーを追いかけてくる。 4 おおん、おおん……と不気味なやまびこが響いてくる。まるで誰かの慟哭のようだ。 5 ひんやりとした指先が、背中をなでる感触。もちろんもうひとりの乗客の手ではない。 6 単調な道がつづき、急に睡魔が襲ってくる。いや、今寝るわけにはいかない……。 7 道路に足あとだけがスタンプされていく。この車の隣を、見えないなにかが走っている! 8 切りたった崖の手前で、黒い人影が手招きしている。そしてふっと消えた。 9 カーナビに表示されている地名が、不気味な文字化けを起こす。この世ならざる場所に迷い込んでしまったかのようだ。 10 風がふき、生い茂る木々が揺れ動く。まるで自分たちをあざ笑っているかのようだ。 11 木の枝に、骨だけのカラスがとまっている。これは本当に現実なのか……? 12 とおくで街のあかりがこうこうと輝いている。はたしてあそこまでたどりつけるのだろうか。