ブレイド・オブ・アルカナ リインカーネイション「泥の手の姫」 /*プレリュード*/ ■シナリオデータ 執筆:アルバガルド プレイヤー人数:3〜4人 想定プレイ時間:4〜5時間 使用経験点:0〜30点程度 GMが使用するルールブック: 『BAR』 ■シナリオのコンセプト  貴族の血を受け継ぎながら、農村で暮らす少女。しかし村が盗賊騎士に襲われたことから、彼女の魂が目を覚ます。 「泥の手の姫」はひとりの少女を守りながら、民を虐げる盗賊騎士を討つ英雄譚だ。  『ブレイド・オブ・アルカナ』というゲームの入り口となることを意識してつくられている。 ■アクトトレーラー  プレイヤーに向かって、以下のアクトトレーラーを読み上げること。 領主なき地、エッセンブルグは乱れていた。 村々を襲い、無法のかぎりを尽くす盗賊騎士たち。 しかし、たったひとりの少女が、彼らの心を翻した。 くわをもつ手は泥でよごれ、日に焼けた肌はそばかすだらけ。 どこにでもいるしがない村娘。 その魂にはコロナの輝きがやどっていた。 幾星霜のときを経て、今、まことの領主が帰還する。 ブレイド・オブ・アルカナ 「泥の手の姫」 アルカナの刃よ、闇の鎖を打ち砕け。 ■シナリオハンドアウト 各PCには、以下の設定がつく。キャラクター作成時によく相談すること。 PC@:エッセンブルグに立ち寄った旅人、ドロテアと前世での知己 PCA:王宮の密偵 PCB:巡回士 PCC:エッセン家と縁ある長命の種族 ▼PC@用ハンドアウト 因縁:☆ドロテア/懐旧 推奨サンプルキャラクター:遍歴の騎士 推奨アルカナ:なし  あなたは旅人だ。旅の途中、近隣の村が盗賊騎士の襲撃を受けたと聞き、あなたはすぐ助けに向かった。しかしそこで見たのは、ひとりの村娘の言うがままに、畑でくわをふるう盗賊騎士たちの姿だった。娘の名はドロテア。彼女の瞳に、あなたはなぜだか懐かしさをおぼえた。 ▼PCA用ハンドアウト 因縁:☆エッセン家の子孫/捜索 推奨サンプルキャラクター:漂白の貴族 推奨アルカナ:なし  あなたはブリュッケン宮廷の家令テオ・リヒトホーフェンに仕える私兵だ。テオは王領エッセンブルグの領主の不在を憂いていた。彼の地には正統なる城伯の家系、エッセン家があったのだが、先年後継者が絶えてしまったという。しかしその血をひく者が、どこかにいるはずだ。テオはあなたに、子孫の捜索を頼んだ。 ▼PCB用ハンドアウト 因縁:☆“血しぶき髪の”ヘルガ/強敵 推奨サンプルキャラクター:巡回士 推奨アルカナ:なし  あなたは巡回士だ。長きに渡る竜伐軍は、ハイデルランドに多くの盗賊騎士を生み落とした。“血しぶき髪の”ヘルガは、そんな無法者どもを束ねる女傑だ。彼女はエッセンブルグの廃城に居座り、近隣の民草を虐げているという。ヘルガには殺戮者の疑いがある。闇の獣を討つ……それがあなたの使命だ。 ▼PCC用ハンドアウト 因縁:☆ドロテア/庇護 推奨サンプルキャラクター:戦闘人形 推奨アルカナ:フィニス、クレアータ、フルキフェルなど  あなたはエッセン家の先祖と約束し、その子孫を見守ってきた。それから数十年。今やその子孫はドロテアただひとりとなった。そんなときエッセン家のかつての居城が、盗賊騎士に占拠された。城にはエッセンの血筋によってのみ開く扉があり、財宝が眠っている。盗賊騎士たちは次にドロテアを狙うだろう。 ■キャラクター作成  アクトトレーラーを読み上げた後、ハンドアウトを各プレイヤーに配布せよ。どのプレイヤーにハンドアウトを渡すかは、GMの任意にしてもよいし、プレイヤーに選択してもらってもよい。 ●クイックスタート  本シナリオでは、次のサンプルキャラクターをクイックスタートで使用することを推奨する。 PC@:遍歴の騎士(『BAR』P26) PCA:漂白の貴族(『BAR』P42) PCB:巡回士(『BAR』P30) PCC:戦闘人形(『BAR』P40) ●コンストラクション  プレイヤーがルールを知っていて、ルールブックも所持している場合、コンストラクションでキャラを作成してもよい。  PC全体の奇跡のバランスを考えて作成すること。PCCについてはフィニス、クレアータ、フルキフェル(エルフ)など、長命な設定が可能なアルカナを取得することを推奨する。 ●プレイヤー人数が3人の場合  プレイヤーが3人の場合はPCCをぬくこと。 ■PC間因縁  PC間の因縁は以下のとおりに取得する。 PC@→PCA→PCB→PCC→PC@ ■特記事項  PC@はドロテアと前世で関わりがあったとの想定である。しかしPC@の前世がどのようなものであったのかは、シナリオではこまかく設定されていない。また導入ステージにて、前世邂逅表を参照する。 /*ストーリー*/  かつてハイデルランド王領エッセンブルグの地には、エッセン家という領主の家系があった。エッセン家はヒルデガルド女王より財宝を預かり、それを守護することを使命としている。そのためにエッセンブルグ城に、エッセン家の血縁者しか開けない地下室をつくり、そこに財宝を保管してきた。  そして、現在。エッセン家の血筋は、ドロテアという少女ただひとりとなっていた。ドロテアは農村でごく平凡な村娘として暮らしていた。彼女はまたかつてエッセンブルグのよき領主であった女伯の転生でもあった。  一方、エッセンブルグ城を占拠した盗賊騎士の首領、“血しぶき髪の”ヘルガは、財宝を入手するためにエッセン家の末裔をさがしていた。  ヘルガが差し向けた盗賊騎士たちは、ドロテアにいる村を襲撃する、しかし、コロナの聖痕を宿していた彼女は、その力によって盗賊騎士たちを改心させる。  ドロテアの正体に気づいたヘルガは、人々をおどし、ドロテアを差し出すよう迫る。  それぞれの事情からドロテアのもとに集まったPCたちは、彼女を守り、ヘルガと戦うことになる。ヘルガを打ち倒したなら、シナリオは終了する。 /*導入ステージ*/ ●シーン1:末裔 シーンプレイヤー:PCC ◆解説  ドロテアが転生する前、かつてこの地にいた女領主(*1)との回想シーン。 ▼描写  数十年前。あなたはひとりの女伯と知り合った。彼女はエッセンブルグの地を治めるすぐれた領主で、そして刻まれし者でもあった。  あるとき、彼女はあなたを呼び出し、こうきりだした。 ▼セリフ:女伯 「このエッセン家には、ヒルデガルド陛下よりお預かりした財宝がある(*2)。王国の危急のとき、それをハイデルランドのためにもちいることがエッセン家の使命なのだ」 「宝は城の地下に、我がエッセンの血筋を鍵として、厳重に保管している。しかし我らエッセン家が徳を失ったり、あるいは悪しき者の手に落ちることもあるやもしれぬ……」 「PCC、あなたの長き生命の、ほんの慰みでかまわない。どうか我が子たちの行く末を見守ってやってはくれないか」 ◆解説2  時が流れ、舞台は現在。エッセンブルグ西方の村。PCCは女伯の子孫であるドロテアとともにいる(*3)。そこに盗賊騎士たちが襲ってくる。 ▼描写2  そして時が流れ、女伯の子孫は、ただひとりとなった。その少女は女伯と違い、小さな農村で生まれ育った。だが彼女の左手には、女伯と同じ痣があった……。 ▼セリフ:ドロテア 「お父様とお母様が亡くなってから、わたしが今日まで生きてこられたのはPCCさんのおかげです。PCCさんはなぜそんなにわたしのことを気にかけてくださるんですか?」 (血筋について話した)「でも、偉い貴族さまの世界のことなんて、わたしにとってはおとぎ話です」 「最近よくない噂を聞くんです。領主さまが亡くなってから、このあたりも盗賊が増えたって……。この村もいつ襲われるか、みんな心配しています」 「あれ、なんでしょう? 山の上から大勢の人が……も、もしかして」 ◆結末  朝もやのむこうから大勢の人影が、この村に向かってくる。盗賊騎士たちが襲ってきたのだ。シーンを終了する。 ●シーン2:国、乱れるとき シーンプレイヤー:PCA ◆解説  場所は王都ブリュッケン宮廷。テオ・リヒトホーフェンに呼ばれ、エッセン家の子孫捜索を命じられる。 ▼描写  王都ブリュッケンの庭を散策するテオ・リヒトホーフェン。常ならば、けっして側をはなれぬ召使いたちも今はいない。あなたがそっと背後に立つと、テオは振り返りもせず話しはじめる。 ▼セリフ:テオ・リヒトホーフェン 「ハイデルランドに王なき今、王領はいずこも乱れています。まこと、由々しきことです……」 「エッセンブルグは代々エッセン家が、領主として治めてきました。しかし先年、最後の領主が病に倒れ、継承者が不在となりました。領主なきエッセンブルグは、今、盗賊騎士が跳梁する無法の地となっています(*4)」 「しかし系図をさかのぼると、エッセン家の子孫が、今もいずこかにいるはずなのです。その者をさがしだしてください」 「エッセンブルグ城の地下には、ヒルデガルド女王ゆかりの財宝が眠っています。しかし宝物庫の扉は、エッセン家の血筋を継ぐ者しか開くことができない……」 「エッセン家の血を継ぐ者だけが、エッセンブルグの宝を継ぐことができるのです。その者がなにを望むにせよ、このままほっておくわけにはいきません」 「エッセン家は昔から聖痕者多き家系です。そして彼らは一様に、左手の甲にコロナの聖痕を宿していたということです。目印になるかもしれません」 ◆結末  PCAがエッセンブルグに向かったならシーンを終了する。 ●シーン3:闇を追う シーンプレイヤー:PCB ◆解説  禿鷲の巣のヴィクトル・ブルーハに呼び出され、“血しぶき髪の”ヘルガの捜査を命じられる。 ▼描写  巡回士たちの組織、禿鷲の巣……。ヴィクトル・ブルーハはあなたに新たなる指令をくだす。 ▼セリフ:ヴィクトル・ブルーハ 「南方帰りの騎士たちが、エッセンブルグの城をのっとった。彼の地には、今治めるべき領主がいない。やつらはまるで領主のようにふるまい、暴虐のかぎりを尽くしている」 「やつらを率いているのは、“血しぶき髪の”ヘルガという女騎士だ。西方では、ずいぶんと屍の山を積み上げたらしい。敵味方を問わず……な」 「PCB。この女を調査し、しかるべき裁きを与えるのだ」 「だが、くれぐれも油断するな。噂ではやつには奇妙なかたちの痣があるという。闇の鎖に囚われているやもしれぬ……」 ◆結末  PCBがエッセンブルグに向かったならシーンを終了する。 ●シーン4:泥の手の姫 シーンプレイヤー:PC@ ◆解説  場所はエッセンブルグの街道。PC@は盗賊に襲われた村に、単身救援に向かう。 ▼描写  それは、あなたの旅路がエッセンブルグにさしかかったときのこと。街道の先から、まるで逃げるように人々が駆けてきた。 ▼セリフ:逃げる村人たち 「どうかお助けください。この先の村が、盗賊騎士に襲われているんです」 「村にはまだ何人もとりのこされています。なにとぞ、お力をお貸しください……!」 ◆解説2  場所はエッセンブルグ西方の村。そこでは盗賊たちがドロテアに従い、農作業をしていた。ドロテアは盗賊騎士たちを説得したのだという。  PC@とドロテアが顔をあわせたところで、PC@に前世邂逅表を振る(*5)。結果はポジティブを参照すること。 ◆描写2  あなたはすぐに村へと向かった。  しかし、村の様子はどこかおかしい。戦いの喧噪などどこにもない。いや、それどころかくだんの盗賊とおぼしき屈強な男たちが、壊れた建物を修理し、くわをもって畑仕事をしている。  その隣では、ひとりの娘が腰に手をあて、盗賊たちにあれこれと指図している。見たところ、ただの農家の娘にしか見えないのだが……。 ▼セリフ:ドロテア 「ほら、文句ばっかり言ってないで、ちゃんと働いてください。剣は振れても、くわは振れないっていうんですか!」 「みんなの家をめちゃくちゃにしたんだから、ちゃんと元どおりにしてくださいね!」 (PC@が話しかけた)「あら、旅人さんですか……?」 ◆結末  その娘の瞳をのぞいた途端、あなたの心にまるでさざなみのように感情が打ち寄せた。シーン終了。 /*展開ステージ*/ ●シーン5:エッセンブルグの窮状 シーンプレイヤー:PCA ◆解説  PCたちの合流を意図したシーン。場所は街道沿いの教会。盗賊騎士たちに追われた近隣の住人たちが集まっている(*6)。 ▼描写  エッセンブルグの街道沿いに建つ教会。そこでは多くの人々が震えながら、身を寄せ合っている。彼らはみな、盗賊騎士から逃れ、ここにきたのだ。 ▼セリフ:エッセンブルグの民 「旅のかたですか。悪いことはいいません。はやくエッセンブルグを立ち去ったほうがいい」 「このあたりの村はみんな盗賊騎士たちの略奪を受けているんです。やつらに言わせれば、あれは徴税なんだそうですよ」 「ヘルガっていう、赤い髪の大男……いや実は女なんじゃないかって話もあります。ともかくそいつが親玉なんです。お城を奪い取って、まるで領主さまみたいにふるまっています」 「ヘルガはあちこちの村に盗賊騎士を送っているんです。お城にも大勢の戦士がいて、近づいた者は皆殺しにされてしまいます」 「ああ、かつてはこの地にエッセンという偉い城伯さまの家があったんです。あんな領主さまがまたいらっしゃったらなあ!」 (左手に聖痕がある者について)「左手のあざ? たしか西の村のドロテアという子に、そんなめずらしいあざがあると聞いたことがあります」 ▼描写2  そのとき、礼拝堂の扉がひらき、ひとりの男が中をのぞいた。どうやら今、着いたばかりらしい。きょろきょろと人々の顔を見回す。 ▼セリフ:西の村の民 「おおい、西の村のものはいるか? 迎えにきたぞ」 「いや、盗賊はまだいる。いるんだが……ドロテアちゃんが盗賊たちを説得したんだ。今、あいつらにはうちの屋根をなおしてもらってる。さあ、帰ろう」 ◆結末 「なんだって……?」  あたりを戸惑ったようなざわめきが満たす。シーンを終了する。 ●シーン6:盗賊騎士の改心 シーンプレイヤー:PCC(いない場合はPC@) ◆解説  PCたちの合流を意図したシーン。場所はエッセンブルグ西方の村。ドロテアの言うがまま働いている盗賊騎士たちが、その心のうちを話す(*7)。 ▼描写  ドロテアが昼食の支度をするあいだ、あなたが盗賊騎士を見張っていることにした。  盗賊騎士たちは野良仕事にいそしんでいる。村人たちは心配そうにとおまきにしているが、盗賊たちはもう悪さをする様子はない。  いったいどんな心境の変化だろう……? ▼セリフ:盗賊騎士たち 「竜伐軍から帰ってきても、古里に俺たちの居場所なんかなかったんだ。だったら腕っ節で稼ぐしかないだろ。そんでいつのまにか盗賊稼業をはじめてたんだ」 「けど、なんでなんだろう、ただの女の子のはずなのに、ドロテアちゃんには逆らえないんだ。なさけねぇ話だぜ……」 「でもどうせ従うなら首領よりドロテアちゃんの方がぜんぜんいいや。飯はうまいし、やさしいもんな!」 「そうそう。それにくらべて首領ときたら、声はでけえし、おならはくさいし、いびきはうるさいし……」 「それにさぁ、首領、最近エッセン家の血筋を見つけろって、怒るんだ。俺たち、酒とメシと女にしか興味ないのによぉ」 (他のPCが登場した)「なんだ、おまえ野菜泥棒か? ここはドロテアちゃんの畑なんだぞ。やるかー、ああん!?」 ◆結末  会話を終えたならシーンを終了する。 ●シーン7:血の継承者 シーンプレイヤー:PC@ ◆解説  場所はドロテアの家の外。盗賊騎士たちにまじり、PCたちもドロテアと食事をともにすることになる。 ▼描写 「はい、みんな、おつかれさまです! ごはんの時間ですよ」  正午。ドロテアは、皆にパンとスープをふるまう。へとへとになっていた盗賊騎士たちは、歓声をあげ大喜びだ。  喧噪のさなか、ドロテアはあなた達にも器を手渡すと、その隣に座った。 ▼セリフ:ドロテア 「ごめんなさい。せっかく来てくれたのに、たいしたおもてなしもできなくって」 「あの……もしかしてどこかでお会いしたことがありますか? いえ、なんとなくそんな気がしたんです」 「盗賊さんたちがやってきて、村のみんなにひどいことをして……わたし、それでみんなに『そんなことしちゃダメ』って怒ったんです。そしたらこの痣がなんだか熱くなって……(*8)」 「でも今は盗賊さんたちも、がんばって働いてくれているんです。お行儀は悪いけど、根はいい人たちなんだって思います。戦争さえなければ、みんなが道を踏み外すことだってなかったのに……」 ◆結末  そのとき盗賊騎士たちがどよめく。彼らはいっせいに空を指差した。シーンを終了する。 ●シーン8:女王の帰還 マスターシーン ◆解説  PC登場不可。廃城に陣取ったヘルガの様子をえがくマスターシーン。 ▼描写  エッセンブルグ城の大広間に集う盗賊騎士たち。その中央では、真っ赤な髪の女騎士が、いらいらと大斧の柄で床をたたいていた。  くちばしのように尖ったワシ鼻、ぎょろりと剥けたまなこ、そして筋骨隆々とした巨躯。  それはまさに怪物という他はない。 ▼セリフ: “血しぶき髪の”ヘルガ 「あのバカどもは、いったいどこをほっつき歩いてるんだい」 「エッセン家の子孫を見つけなけりゃ、この城の財宝は手に入らないんだよ。あの扉ときたらどんだけぶっ叩いても、ひびひとつはいりゃしないんだからさ」 「業腹だねぇ。この財宝はもともとフォーゲルヴァイデ王家のもの。つまり、ヒルデガルド女王の生まれかわりである、あたしのものだっていうのにさぁ……!(*9)」 「あたしも小さなころはヒルデガルド様と同じ、それはそれは麗しい金髪をしていたものさ。まあ、戦場で血を浴びすぎたおかげで、今じゃこんな色になっちまったけどねぇ」 ▼セリフ:ヘルガの配下 「ははははは、またはじまった。首領がヒルデガルド女王の生まれかわりだなんて、冗談もやすみやすみ……ぶへぇ!?」 ◆結末 「なに笑ってるんだい!」  ヘルガは斧の柄で、笑う配下の頭を殴りたおす。配下は昏倒し、動かなくなる。 「どうやら、あの子たちにもすこしお灸をすえてあげる必要がありそうだねぇ」  ヘルガは獰猛な笑みを浮かべた。シーンを終了する。 ●シーン9:災いの雲 シーンプレイヤー:PCB ◆解説  PC全員登場。業を煮やしたヘルガがドロテアのいる村に向かって、奇跡《大破壊》を使用する。あくまで恫喝であるため、建築物以外に危害を加えることはない。  ヘルガはドロテアを差し出すよう、その場にいる全員に命じる。 ▼描写  村の上空に浮かんでいる雲がうねり、巨大な女騎士の姿をかたちづくる。波の元力が、雲を自在に操っているのだ。  巨人は手にした大斧を振るう。その氷でできた刃は、次々と民家をふきとばしていく。 ▼セリフ:“血しぶき髪の”ヘルガ 「あんたたちいったいなんだい、このていたらくは! 若い娘にたぶらかされて!」 「んんん? その娘に流れる血、妙なにおいがするね。あの城に染みついているのと、同じにおいだ。それにその左手の痣……ははぁ、あんたがエッセン家の末裔だね」 「いいかい、よく聞きな。その娘を献上すれば、あたしに逆らった罪だけは許してあげるよ。でなけりゃ……あんたたち全員すり潰して、髪染めに使っちまうからね!」 ▼セリフ:盗賊騎士たち 「ひいいいいいい……!」 「首領。許して、許してくれぇ……!!」 ▼セリフ:ドロテア 「そんな村が……ひどい」 ◆結末  雲の巨人は消え失せ、あとには崩壊した村だけが残された。束縛の処理を行いシーンを終了する。 ●シーン10:歩むべき道 シーンプレイヤー:PCA ◆解説  PC全員登場。情報収集を行うシーン。登場したPCはひとり1回まで、情報収集を行える(*10)。「▼情報」に箇条書きされた項目をプレイヤーに提示すること。各プレイヤーは項目のうちひとつを指定し、〔事情通〕〔交渉〕のいずれかの技能で判定を行う。  成功したならばGMはその情報を伝えること。またすでに判定を行ったPCも、DPをD10減らすことで、再度判定を行うことができる。これはDPを減らすたびに何度でも行える。 ▼描写  あなたたちは殺戮者のおぞましさを目の当たりにした。あの“血しぶき髪の”ヘルガを討たないことには、エッセンブルグに未来はない。  だがどうすればあの殺戮者のもとにたどり着くことができるだろう。 ▼情報:エッセンブルグ城  エッセンブルグを守護してきた城塞。代々、エッセン家がこの城を預かっていた。今ではヘルガ率いる盗賊騎士の支配下にある。城壁はきわめて堅牢で、近づくものはなすすべもなく殺されてしまう。しかし城には秘密の脱出路があるという噂がある。 ▼情報:城の財宝  もともとはフォーゲルヴァイデ王家が、フェルゲンの王城に保管していた財宝。  1065年にフェルゲンが火竜の襲撃を受けた際、うち捨てられた。それをときのエッセンブルグ城伯があつめ、のちにヒルデガルド女王に返却を申し出た。  ヒルデガルド女王はこれを受けとらず、「ハイデルランドのためにもちいるように」といい、そのまま城伯に託したという。  以来、宝は城教会の宝物庫におさめられている。扉には魔法がかかっており、エッセン家の血筋でなければ開けることはできない。  またエッセンブルグ城には宝物庫以外にも、魔法の扉があるらしい。  以上の情報のうち1つが判明したなら、新たに以下の項目を提示する。 ▼情報:秘密の地下道  エッセンブルグ城には秘密の脱出路があり、その出入口にも、エッセン家の血筋でのみ開く魔法がかかっている(*11)。盗賊騎士たちもその存在に気がついていない。  この地下道を使えば、城内に入ることができるだろう。 ◆結末  PC全員が情報収集を終えたならシーンを終了する。 ●シーン11:決意 シーンプレイヤー:PC@ ◆解説  ヘルガの恫喝におびえ村人たちが、ドロテアを捕縛しようとする。ドロテアは逆に、自分を人質にして、城に乗り込むことを提案する。 ▼描写  あなた達がドロテアといると、村人達がやってくる。彼らはかたい表情で、ドロテアを引き渡してほしいと、あなた達に頼んできた。 ▼セリフ:村人たち 「ドロテア。すまない……でも私たちにはこうするしかないのだ……」 「ヘルガを怒らせたら、みんな死んでしまう……他の村もそうだった。私たちには妻も子もいるんだ。おまえたちだって、ヘルガのもとにいたならわかっているだろう!?」 ▼セリフ:盗賊たち 「うう、けど……けどよぉ。だからってドロテアちゃんを差し出すなんてなしだろ!?」 「ド、ドロテアちゃん。俺たちいったいどうしたらいいんだぁ……!?」 ▼セリフ:ドロテア 「なっ、泣かないでください。よしよし」 「……みんなが言うこともわかります。でも、このままわたしをつかまえも、きっと首領さんは悪事をやめません」 「エッセンブルグの人たちはみんな困ってます。盗賊さんたちも泣いてます。首領さんは間違ったことをしています……!」 「わたし、首領さんを止めなくっちゃいけません。わたしにできることなんて、なにもないかもしれないけど……でも、ほっておけないって、心の奥で誰かが叫ぶんです」 「お願いです、皆さん。どうかわたしをエッセンブルグ城に連れて行ってください。きっと……戦いになると思います」 ◆結末  ドロテアの決意に、PCたちがこたえたならシーンを終了する。 ●シーン12:エッセン家の血筋 シーンプレイヤー:PCA ◆解説  PC全員登場。ドロテアとともに、エッセンブルグ城の地下道へと向かう。 ▼描写  村外れに、岸壁に埋まった苔むした扉があった。誰にも開けることができず、いまでは忘れさられている。  この扉をぬければ、エッセンブルグ城へとたどりつけるはずだ。 ▼セリフ:ドロテア 「でも、本当にわたしで、扉が開くんでしょうか?」 「ご先祖さまのことはわかりませんけど……でも今のわたしは、しがない村の娘です。ほら、手の皮も分厚くて、もう洗っても汚れがとれないんです。とても貴族さまの手じゃありません」 「でも、なぜでしょう。この扉、どこかで見たおぼえが……とおい、とおい昔に……」 ◆結末  ドロテアの指先が触れると、扉は音をたてて開く。そして暗闇へとつづく、秘密の地下道が姿をあらわした。シーンを終了する。 ●シーン13:心が還る場所 シーンプレイヤー:PCC(いない場合はPC@) ◆解説  PC全員登場。エッセンブルグ城内への侵入に成功する。城内の光景を見たドロテアは、わずかに前世の記憶をとりもどす。 ▼描写  あなたたちは秘密の地下道をぬけ、エッセンブルグ城内へと入った。数百年の長きにわたりエッセンブルグの地を守ってきた堅城は、今や悪の拠点となっている。  城内の光景を前にして、ドロテアは目を見張った。どうやら見覚えがあるらしい。 ▼セリフ:ドロテア 「城壁も、中庭も、尖塔も……みんな、みんなおぼえています。はじめてきたはずなのに……!」 「わたしこのお城でずっと暮らしていたんです。隣にはPCCさんやPC@さんもいて、ここでこうして。いえ、そんなはず」 「あれ、わたし泣いてる……?」 ◆結末  ヘルガの部下達の話を盗み聞きすると、ヘルガが城教会にいることがわかる。城教会の地下には、宝物庫があったはずだ。シーンを終了する。 ●シーン14:血の入浴 シーンプレイヤー:PCB ◆解説  PC全員登場。礼拝堂に足を踏み入れたPCとドロテアは、そこでヘルガの[悪徳]を目撃する。[悪徳]による逆位置の鎖を配布すること。 ▼描写 「そう、この先に立派な城教会があるんです! ケルバーの職人さまにつくってもらったステンドグラスが、それはそれは綺麗で……!」  ドロテアはうれしそうに、礼拝堂の扉を開ける。しかし、そこには陰惨な光景が広がっていた。  その天井から、多くの死体が逆さづりにされている。男、女、老人、子供、仲間であろう盗賊騎士まで……。すべて首から上がなく、切断面から血のしずくがしたたっている。  床には、斧で切断された頭部が、ごろごろと転がっていた。 ▼セリフ:ドロテア 「こ、これ……みんな人間なんですか……?」 「ひどい。こんなのひどすぎます……」 ▼セリフ:“血しぶき髪の”ヘルガ 「へえ、乙女の浴室を勝手にのぞいておいて、ご挨拶だねぇ……」 ◆結末  城教会の奥から、ヘルガがあらわれた。  シーンを終了し、対決ステージへと移行する。 /*対決ステージ*/ ●シーン15:エッセンブルグの支配者 シーンプレイヤー:PCA ◆解説  エッセンブルグ城、城教会において、ヘルガと対峙するシーン。  エネミーはヘルガ1体に加え、戦士団(『BAR』P260)2体。PCたちを1エンゲージとし、5メートル前方にヘルガを、5メートル後方に戦士団2体を配置する。  ドロテアは奇跡を使用して、PCを援護する。使用する奇跡は《天真》《活性化》。いつどのように使用するかはプレイヤーが決定できる。それ以外の行動は行わないため配置はしないが、もし必要な場合はPC@と同じエンゲージにいるものとする。ヘルガはドロテアを攻撃の対象にはしない。 ▼描写  大斧をかついだ殺戮者が、あなたたちを睨みつける。  同時に部屋中の血だまりがぼこぼこと沸騰し、礼拝堂を湯気で満たす。その湯気の中に、巨大な悪魔の影が浮かびあがった。  これこそが異形……“血しぶき髪の”ヘルガの魂のかたちなのだ。 ▼セリフ:“血しぶき髪の”ヘルガ 「あたしの元力は水を操るんだけどね、中でも血を使うのがいちばんなじむのさ。それになにより、こうして頭から血を浴びるのは、気分がいい……」 「戦場で、西戎どもの血を浴びているうちに気がついたのさ。こんなにも強いあたしは、すべての人の上に立つべき存在。そう、あたしはハイデルランド統一の英雄、ヒルデガルド女王の生まれかわりなんだってね!」 「ハイデルランドに王なき今、この王領は群雄割拠。どこの領主も好き勝手喧嘩をふっかけあって、つぶし合ってる。あたしもこの城を根城に、のらせてもらうつもりさ」 「エッセンブルグの財宝は、そのための軍資金にさせてもらうよ。なあに返してもらうってだけさ。なにしろ、あたしはヒルデガルド女王の生まれかわりなんだからねぇ……!」 「いやだっていうなら、力尽くだよ。このハイデルランドには本当の君主が必要なのさ。何者よりも強い存在、殺戮者の女王がね」 (宴宣言)「さあ、このヘルガ女王に、あんたたちの聖痕を献上しな!」 ▼セリフ:ドロテア 「あなたは間違っています。あなたは女王なんかじゃありません……!」 ◆結末  [宴宣言]とともに戦闘ラウンドを開始する。 ●シーン16:聖痕の解放 シーンプレイヤー:PC@ ◆解説  [聖痕の解放]を行うシーン。ヘルガ、そして戦いに倒れたPCの聖痕が空へと帰る。 ▼描写  ヘルガの巨体から、いくつもの聖痕が浮かび上がり、空へと帰って行く。 ▼セリフ:“血しぶき髪の”ヘルガ 「ちくしょう! ちくしょうっ! 小童どもが、図に乗りやがってぇぇぇぇ!? あたしは女王なんだよ。あんたたちみたいなクズどもとは違うっ。ちくしょぉぉぉぉぉぉ!!」 ◆結末  PCたちがDPの回復を行ったなら、終局ステージへと移行する。 /*終局ステージ*/  ドロテアの今後については、PCの判断が大きく関わってくる。プレイヤーの要望をくみとって、物語を終わらせること。  PCAがテオにドロテアについて報告したなら、テオはドロテアがエッセンブルグ城伯を継承できるようにとりはからう。その上で、ドロテアを預かり、貴族として教育することを提案する。将来的にはドロテアが統治を行うことになるだろうが、当座は代官が派遣される。  ドロテアは盗賊騎士たちをきびしく罰しないことを条件に、この提案を受け入れる。  またアクトの流れによっては、ドロテアが別の道を選ぶこともありえるだろう。その場合にはシーンの描写を調整すること。 ●シーン17:マイ・フェア・レディ シーンプレイヤー:PCA ◆解説  テオ・リヒトホーフェンに、事の顛末を報告するシーン。テオはPCAにドロテアがいかなる人物かたずねる。 ▼描写  ブリュッケン宮廷の庭園。テオ・リヒトホーフェンはあなたの報告に、しずかに耳を傾ける。 ▼セリフ:テオ・リヒトホーフェン 「ご苦労さまです。これでようやく前領主の相続手続きをすすめられます」 「あなたから見て、ドロテアさんはどのような人物ですか」 「なるほど、あなたの人の目を見る目はたしかです。彼女が爵位を相続できるようとりはからいましょう」 「とはいえ、農村で育った彼女に、すぐさま領地を治めるなど無理な話です。もしドロテアさんさえよろしければ、ここブリュッケンで、しかるべき教育が受けられるよう手配しましょう」 「今や諸侯たちは利益を求め、それぞれの思惑で動いています。そんな中で、新たに心ある領主が生まれるのは、喜ばしいことです」 ◆結末  会話を終えたならシーンを終了する。 ●シーン18:禿鷲たち シーンプレイヤー:PCB ◆解説  ヴィクトル・ブルーハに、事の顛末を報告するシーン。ヴィクトルはPCBをねぎらい、その戦果をたたえる。 ▼描写  殺戮者を倒したあなたは、また禿鷲の巣に舞い戻った。あなたの報告を聞き、ヴィクトル・ブルーハはふかくうなずいた。 ▼セリフ:ヴィクトル・ブルーハ 「やはり“血しぶき髪の”ヘルガは殺戮者だったか……」 「王権が揺らいでいる今、やつのような殺戮者はますます跋扈するようになるだろう。これから忙しくなるぞ」 ◆結末  会話を終えたならシーンを終了する。 ●シーン19:あの日の友と シーンプレイヤー:PCC ◆解説  場所は解放されたエッセンブルグ城。ドロテアと会話するシーン。ドロテアは前世の記憶をすこしだけとりもどしており、PCCが約束を守ってくれたことに感謝する。 ▼描写  エッセンブルグ城の食卓には、盗賊騎士たちが勢揃いしていた。ドロテアが厨房からごはんを手にあらわれると、いっせいに歓声をあげる。殺戮者の影から解放された彼らは、すっかりドロテアにメロメロになっていた。 ▼セリフ:ドロテア 「リヒトホーフェン様から、わたしがエッセン家を継げるようにはからうって申し出があったんです。そのためにブリュッケンにお勉強に来なさいって」 「びっくりしましたけど、お受けしようと思うんです。今のわたしには盗賊さんたちみんなに、おうちやお仕事をあげることはできません。みんなを助けるために、わたし変わらなくっちゃいけないんです」 「わたしが王都に行っているあいだ、盗賊さんたちのこと、よろしくお願いします」 「ずっと約束を守ってくれて、ありがとうございます。PCC、わたしまた故郷に帰ってこれました」 ◆結末  あなたに微笑むドロテアは、かつての友と同じ顔をしていた。  会話を終えたならシーンを終了する。 ●シーン20:時を超えた再会 シーンプレイヤー:PC@ ◆解説  王都ブリュッケンへと旅立つドロテアと、会話するシーン。PC@はドロテアについていってもよいし、村で待っていてもよいし、また旅だってもよいだろう。 ▼描写  王都ブリュッケンから、迎えの馬車がやってくる。よそゆきの服をなんとか間に合わせたドロテアは、緊張の面持ちで馬車を待っていた。 ▼セリフ:ドロテア 「100年ものあいだ、エッセン家は財宝を守り続けてきました……王国が再興してから、ハイデルランドは平和だったから」 「けれど、今このハイデルランドに嵐が起きようとしています。エッセン家を継ぐ者として、この財宝をいかにすべきか、決断すべきときはきっとすぐそこまで来ています」 「わたしとPC@さんが今、こうしてエッセンブルグにもどってきたのは、そういう運命なんだと思います」 (ドロテアと別れる)「きっとまた会えます。時を超えて、こうして巡り会えたんですから……!」 (ドロテアとともに行く)「もう二度と、この手ははなしません。どうかこの生を、わたしと共に歩いてください……!」 ◆結末  ドロテアはあなたの手をそっと握る。その手のひらはかたく、かすかに土の香りがした。  会話を終えたなら、シーンを終了する。 ●最後に  以下の文章を、シナリオ終了のエピローグとして読み上げるとよいだろう。  西方歴1166年、長らく主のなかったエッセンブルグ城教会の鐘が鳴った。人々は城を見上げ、ついに城伯さまがお戻りになったのだと噂した。  しかし、当代のエッセンブルグ城伯は、まるでしがない村娘のような出で立ちであったという。  くわをもつ手は泥でよごれ、日に焼けた肌はそばかすだらけ。されど、その気高きは、誰の目にも明らかであった。  人々は彼女を敬愛し、こう呼びならわした。  泥の手の姫、と――。 /*ポストアクト*/  終局ステージを終えたならば、ポストアクトだ。経験点を配布すること。  アクトの目的である「エッセンブルグを救う」は、“血しぶき髪の”ヘルガを倒すことで達成される。 /*NPC*/ ドロテア ▼アルカナ アングルス=ステラ=コロナ(ゲスト) ▼設定  エッセンブルグ西方の村で暮らす16歳の少女。昔からエッセンブルグ城伯を継承してきた、エッセン家の末裔。しかし農村での暮らしが数代つづき、ドロテア自身は農家の娘にすぎない。  本人にきちんとした自覚はないものの、刻まれし者。同じく刻まれし者であった女伯の転生体であり、左手にコロナの聖痕がある。データはなく、奇跡のみを使用する。 “血しぶき髪の”ヘルガ ◆アルカナ アダマス=アルドール=エフェクトス(ゲスト) ▼設定  エッセンブルグ城に居座り、民を虐げる殺戮者。鬼人と見まごう巨体をもつ女傑で、盗賊騎士たちをたばねている。第五次竜伐軍に参戦した下級騎士のひとりで、西戎のみならず味方の兵にまでおそれられていた。  血のような赤毛がふたつ名の由来だが、本人によると幼いころは綺麗なブロンドであったらしい。自身をハイデルランド王国再統一の英雄、ヒルデガルド女王の転生体だと信じている。 ■敵データ “血しぶき髪の”ヘルガ ◆データ アルカナ:アダマス=アルドール=エフェクトス 異形:血からたちのぼる湯気が、おぞましき巨人のかたちをとる ▼能力値&技能 体格:19 反射:14 共感:11 知性:10 希望:12 HP:150 AP:14 〔重武器〕3 ▼アイテム 武器:バトルアックス〔重武器〕 攻:S+12 防:3 射:至近 スタディットレザー:S5/P4/C4 合計:S5/P4/C4 ▼特技&コンボデータ ・常時 〈殺戮の魂〉10 効果:【最大HP】に+100する(計算済)。 ・狂戦士 〈狂戦士〉3 タイミング:セットアッププロセス 技能:宣言 対象:自身 効果:自身の白兵攻撃の命中判定のクリティカル値+4する。自身のリアクションにダイスペナルティ-2する。ラウンド終了まで持続する。 ・元力暴走 〈元力暴走〉3 タイミング:マイナーアクション 技能:宣言 対象:自身 効果:使用時に15点までのHPを消費。攻撃のダメージに+[消費したHP]する。メインプロセス終了まで持続する。 ・女王のおとおりだよ! 〈元力:波〉1〈元力倍加〉2〈元力武装〉1〈旋風撃〉3〈破斬剣〉1〈剣圧〉3 タイミング:メジャーアクション 技能:〔重武器〕4 代償:H9 判定値:12 クリティカル値:1 対象:範囲(選択) 射程:至近 効果:物理攻撃を行なう。ダメージC+26。1ラウンドに1回、1シーンに3回使用可能。 ・血しぶきになりな! 〈元力:波〉1〈元力倍加〉2〈元力武装〉1〈旋風撃〉3〈破斬剣〉1 タイミング:メジャーアクション 技能:〔重武器〕4 代償:H4  判定値:16  クリティカル値:1 対象:単体 射程:至近 効果:物理攻撃を行なう。ダメージC+26。 ・女は強いんだよ! 〈金剛〉2〈鉄壁〉3 タイミング:リアクション 技能:〔重武器〕3 代償:H3 判定値:13 クリティカル値:1 効果:バトルアックスでガード。防御修正は9となる。 ■聖痕10個 ■エフェクトス 《大破壊》 □クレアータ 《戦鬼》 □マーテル 《再生》 □アダマス 《無敵防御》 □ファンタスマ 《真名》 □アルドール 《絶対攻撃》 □アルドール 《絶対攻撃》 □グラディウス 《死神の手》 □アングルス 《天真》 □デクストラ 《爆破》 ■戦術 ▼セットアッププロセス  セットアッププロセスに〈狂戦士〉を使用。白兵攻撃の命中判定のクリティカル値を上昇、同時に自身のリアクションにダイスペナルティを受ける。 ▼攻撃  自身の行動順では、ムーブアクションでもっともPCの人数の多いエンゲージに移動。マイナーアクションで〈元力暴走〉を使用。15点のHPを消費し、ダメージを上げる。メジャーアクションで「女王のおとおりだよ!」「血しぶきになりな!」のどちらかを行う。可能であれば「範囲(選択)」を対象とする「女王のおとおりだよ!」を優先して行う。白兵攻撃でクリティカル値は5。ダメージはC+41となる。 ▼リアクション  リアクションは「女は強いんだよ!」でガードを行う。〈狂戦士〉でダイスペナルティ-2がついているため、判定のダイスは1個。判定値は13で、防御修正は9となる。 ▼奇跡  セットアッププロセスのあと《絶対攻撃》をもちいてPCのエンゲージに入り、単体を対象に攻撃を行う。同時に《死神の手》を使用する。  PCの誰かが移動を行う前に《爆破》を使用する。  HPが0になったなら《再生》を使用して復活する。これを打ち消されそうになったなら《天真》《戦鬼》でさらに打ち消す。 ▼プレイヤー3人用のバランス調整  このシナリオはプレイヤー3人でプレイすることが可能である。その場合は以下のバランス調整を推奨する。 “血しぶき髪の”ヘルガの聖痕から、クレアータ《戦鬼》とアルドール《絶対攻撃》を削除する。またHPを-30する。 /* 右柱に記載する注釈 */ ●PSルール  『クラウン・オブ・イビル』掲載の追加ルール、「PS」を採用する場合、各プレイヤーに以下のものを渡すこと。 PC@:ドロテアとの絆をとりもどす PCA:エッセン家の末裔を見つける PCB:“血しぶき髪の”ヘルガを討つ PCC:ドロテアを見守る (*1)女領主  ドロテアの前世である。この回想シーンのこまかい年代については、ヒルデガルド女王即位後であること以外設定はない。  PCCの設定にあわせ、演出すること。 (*2)ヒルデガルド陛下よりお預かりした財宝  ヒルデガルド女王はおよそ100年前、ハイデルランド王国を再興した英雄である。  その財宝は単なる金銀や宝石だけでなく、ヒルデガルドの父、ヘルマン一世が集めていたさまざまな魔法の品々などもふくまれる。しかしその具体的な中身が、このシナリオであつかわれることはない。 (*3)ドロテアとともにいる  PCCはドロテアとともに暮らしている必要はない。その場合はたまたまドロテアのところを訪ねていたタイミングで、盗賊騎士の襲撃があったのだとするとよいだろう。 (*4)領主なきエッセンブルグ  エッセンブルグはハイデルランド国王の直轄領……すなわち王領である。エッセンブルグ城を中心に、複数の村落が存在する。  本来であればエッセンブルグ城伯が、王のかわりに統治を行う。しかし、現在は国王も領主もいない。  現在、王領は宮中伯テオ・リヒトホーフェンが管理しているが、諸侯を御することができず、治安は悪化の一途をたどっている。 (*5)前世邂逅表  PC@の前世がどのようなものであったかという設定は、基本的にはプレイヤーの自主性にまかされている。極端にいえば前世についてまったく言及しないまま、シナリオをすすめても問題ない。  もしプレイヤーが戸惑うようであれば、GMは「女伯に仕えていた騎士であり、刻まれし者として共に戦った」という設定を提案するとよいだろう。  またPCCもPC@と前世で関係があったであろうことも想像にかたくない。PC間で前世邂逅表を参照するのもよい選択だ。 (*6)近隣の住人たちが集まっている  ドロテアが改心させた盗賊騎士は、あくまでエッセンブルグ城にいる盗賊騎士のごく一部でしかない。ドロテアの暮らす西の村以外の村々は、別の盗賊騎士の一団に襲われている。 (*7)盗賊騎士たちが、その心のうちを話す。  ドロテアは食事の準備をしているため基本的にはシーンには登場しない。しかしPCが呼ぶなら、登場させてもよいだろう。GMは適宜対応すること。 (*8)痣がなんだか熱くなって  盗賊騎士を叛意させたのは、ドロテアが使用した《紋章》の効果である。シーン中でその場面が直接描写されたわけではないため、束縛を発生させる必要はない。 (*9)ヒルデガルド女王の生まれ変わり  生まれ変わりというのは、“血しぶき髪の”ヘルガの自称であり、単なる思い込みだ。 (*10)ひとり1回まで、情報収集を行える  プレイヤーが3人の場合は、ひとり2回まで調べられるものとする。 (*11)出入口  つまりドロテアを連れて地下道をぬける必要があるということだ。  またこの地下道を使わず、PCが別の手段を考案することも考えられる。その際にはなんらかの奇跡のドラマ効果を使用することで、実行可能であるとするとよいだろう。 /* 奥付 */ ■このシナリオをプレイしたなら ぜひプレイした感想、今後の要望などメッセージ、Twitterのリプライなどでお寄せください。 またNPCのイラストなどを作成しましたら、ぜひお送りください。 クレジットを明記の上、シナリオとともに配布したいと考えております。 公開日 2017年11月7日 執筆 アルバガルド DTP アルバガルド サイトURL http://ikefukurou.sakura.ne.jp/alba/ 本作品は、株式会社エンターブレインより刊行された『ブレイド・オブ・アルカナ リインカーネイション』や、その関連商品を取り扱った二次著作物です。『ブレイド・オブ・アルカナ リインカーネイション』とその関連商品は、有限会社ファーイースト・アミューズメント・リサーチの著作物です。 また以下をはじめとした素材を使用しています。謹んでお礼申し上げます。 素材 freedesignfile.com vectorgoods.com http://ayaemo.skr.jp/ https://www.silhouette-ac.com/